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PROJECT STORY
より、使いやすく、美しく。
ホーローシステムキッチン、終わりなき挑戦。
![](../../img/work/project-story/img_projcet-story01.png)
高品位ホーローは、鋼板にガラス質の釉薬(うわ薬)を吹き付け、高温で焼き付けてつくる。高級感あふれる深みある色調、繊細さや優雅さを醸し出す柄や模様・・・。そうしたホーローの美しさは、七宝焼きや陶磁器などの工芸品にも似た本来の製法に、独自の「加飾(絵付け)」技術が加わることによって生み出される。さらに、切断や組み付けにも木材などとは比較にならないほど高度な加工技術が必要だ。複雑で微妙なさじ加減を必要とするホーローを市場の要求にマッチするデザイン、価格、機能を備えた製品に生まれ変わらせることは容易ではない。だからこそ一層、より美しく、より妥協のないものへと、チームの想いは高まっていく。
MEMBER
座談会参加メンバー
![座談会参加メンバー写真1](../../img/work/project-story/pic_member01.png)
1995年入社
製品開発
上田 芳秀
Ueda Yoshihide
![座談会参加メンバー写真2](../../img/work/project-story/pic_member02.png)
2015年入社
製品開発
黒川 將平
Kurokawa Shohei
![座談会参加メンバー写真3](../../img/work/project-story/pic_member03.png)
2017年入社
製品開発
福原 信子
Fukuhara Nobuko
![座談会参加メンバー写真4](../../img/work/project-story/pic_member04.png)
2014年入社
素材研究
高山 佳之
Takayama Yoshiyuki
![座談会参加メンバー写真5](../../img/work/project-story/pic_member05.png)
2018年入社
生産技術
大谷 健太
Otani Kenta
![](../../img/work/project-story/pic_column01.png)
挑むのは、ホーローシステムキッチンの
更なる拡販という一大テーマ。
2019年春。研究開発本部 開発部の上田芳秀は、これから動き出すビッグプロジェクトを前に、緊張感を募らせていた。タカラスタンダードの主力商品ともいえる、中級ホーローシステムキッチンのフルモデルチェンジがいよいよスタートするという。中級ホーローシステムキッチンは人気も高く、売上台数も多いためリニューアルの影響は甚大。全社をあげたビッグプロジェクトである。リニューアルの狙いは、都市部・若年層の取り込み。コストを極力抑えながらも、トレンドとホーローの特性を活かすデザインを融合し、デザインやカラーバリエーションを増やすこと。さらに、都市部の取り込みを見据え、リフォーム仕様を充実させることも重要なテーマだった。今回のプロジェクトは当初2018年2月発売を予定し、進められていたが、引手デザインの見直しが必要と判断され、一度は延期になっている。今回は、以前の案に更なる改良を加え「デザイン」、「価格」、「リフォーム対応力」といった明確な目標をクリアしなければならない。プロジェクトメンバーと密に連携をとり、様々な課題に取り組んでいかなければならないと、覚悟を決めた。
同じ頃、研究開発本部 開発部の黒川將平もホーローシステムキッチンの拡販を目論む重要なテーマに挑むことに対し、期待に胸を膨らませていた。黒川が担当するのは、プロダクトデザイン。若い層のお客様に受け入れられるトレンドを意識した、新しいデザインをカタチにしていかなければならないと考えていた。
![](../../img/work/project-story/pic_column02.png)
若年層の心を掴む、
トレンドを取り入れデザインと価格の追求。
黒川は、より若い層のお客様の心を掴む製品に生まれ変わらせるには、若々しい雰囲気が出せるようなデザインが欠かせないと考えていた。と同時に、若年層が手の届きやすい価格を意識することも重要だ。
黒川がメインで担当するハンドル引き手のデザイン開発においても、デザインとコストの両立は高いハードルだった。一度は引手デザインがネックとなり延期になったプロジェクトでもある。プレッシャーは大きい。しかし、材質や製造方法、製造に必要な原材料の体積等、細部にまで配慮しながらデザイン性を追求し続けた。引手の素材をホーローから金属製のものに変更し、スタイリッシュさと高級感を維持するため、引手の幅を保ちながら、材料の体積を調整し、コストとデザインのバランスをとるため、微妙な調整を重ねていく。もちろん、強度も担保しなければならない。粘り強く細かい調整を繰り返した。何度も強度試験や試作を行い、数ミリ単位のせめぎ合いが続いた。
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異動した先輩からこのプロジェクトの担当を引き継ぐことになった研究開発本部 開発部の福原信子。当時入社3年目の福原は、製品のフルモデルチェンジに携わるのは初めてだった。福原が担当することになったのは、キャビネットの部品取り付け構造の新規設計、扉の部品設計だ。今までは工場でしか取り付けることができなかった部品を現地で簡単に交換できるような構造に変更するというのが、福原が与えられたテーマである。しかし、想像していなかった問題が起きた。設計した部品がなかなかキャビネットにうまく取り付かないのだ。システムキッチンは、多くの部品によって複雑に組み上げられている。しかも、ホーローは焼き物。工業品ではなく工芸製品であると言われるように、製品にバラつきがでやすい。部品一つひとつの形状も複雑で部品の設計も容易ではない。原因を掴みきれずにいた福原に、製品開発のリーダーである上田がこうアドバイスをした。ホーローは釉薬を複数回焼き重ねるため、厚みのバラツキが出る。これを想定し、ホーローの厚みに左右されない設計にすることが必要だと。一方で、扉に反りが出てしまうという問題も発生していた。何度も工場に行って試作に立ち会い、検証を繰り返す等大変な作業が長く続いたが、上田の知識・経験が福原の挑戦を支えた。困難に直面する事で成長した福原は、持ち前の粘り強さと明るさで難局を乗り越えてみせたのだった。
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工芸品に並ぶ製品を
効率的に量産化する方法を模索する。
同年夏ごろ、知多工場技術課 高山佳之、福岡工場生産課 大谷健太の挑戦もはじまった。システムキッチンの全体的な印象を決めるホーローの色や柄は、ベースとなる釉薬を焼き付けた上に、転写紙などで柄を焼き付けることで表現される。高山は、デザインチームから上がってきた柄を転写紙で再現するため、試行錯誤を続けていた。何層にも色・柄を重ね、つくりあげられているホーローの柄は、色の配合、色合わせ、色のトーン、濃淡などのニュアンスの調整を繰り返し、仕上げていく。「もっと柄を鮮明に出せないか」、「色に深みが出せないか」・・・。何度もデザインチームとやりとりを繰り返し、黒川からの品評をもとに、細かなニュアンスまで忠実に再現していく。試作を重ね、色や柄をつくり上げていくのである。
今回のプロジェクトに伴って新たに開発された「コンクリートグレー」という柄がある。開発途中までは全く計画されていなかったが、デザインチームのメンバーがイタリアの展示会・ミラノサローネの視察で入手した情報を元に、急遽開発することになった柄である。工場の技術課や生産課、そしてデザインチームが一致団結し、短期間で完成させたこの柄は、トレンドであるスタイリッシュな空間にマッチし、お客様の心を掴むイメージカラーに仕上がった。
一方、当時入社2年目の大谷は、今までにない複数の色・柄のバリエーションを持つこの製品の量産化に挑んでいた。今回のプロジェクトでは2色のサイドモール(黒とシルバー)が設定された。
これまで、販売数量の多いシリーズでは2色のモール設定は無かったので、生産工程におけるミスを防ぐための工夫が必要だった。また、扉の横幅に2mm違いの設定が追加されたことにより、通常品とミキリ品の区別をつけることにも苦戦した。
このように間違いやすい設定のものが多いため、とにかく分かりやすい指示書をつくることが必要だった。違いを判別しやすいよう特徴を記入するなど指示書に工夫を凝らし、現場と何度も確認を行いながら生産工程を設計していった。一方で、開発の上田、福原とも相談し、引手の上下を判別するためのマークをつけることや、扉に判別穴をつける等の間違い防止策を実施することも決まった。これによって製造工程の課題も無事にクリアすることができた。
![](../../img/work/project-story/pic_column05.png)
成し遂げたフルモデルチェンジが
市場を揺るがす大きな反響を呼ぶ。
2020年2月、数々の課題をクリアし、新しく生まれ変わった「トレーシア」がデビューした。アイコンカラーであるコンクリートグレーは当初、若年層をターゲットとして開発した色であったが、リフォーム検討世代でもある50代にも好評だ。また、CMでも大々的にPRを行っているため、「CMのキッチンを見せて下さい」とショールームに来場されるお客様も多いという。新型コロナウィルスの流行という今までにない社会情勢の中でのリリースとなったが、3~4月の滑り出しは好調。ホーローならではの美しさとトレンドを捉えたデザイン性、機能性、そして価格、リフォーム対応の柔軟性・・・フルモデルチェンジの反響は想像以上に大きく、プロジェクトメンバーたちは想像以上の達成感を味わった。しかし、表からは見えない、積み残された課題を知り抜いているのも彼らだ。それは同時に、未来への伸びしろでもある。達成感のなかから突き上げてくるその想いが、今回の経験を通じ大きく成長したメンバーたちを、次の挑戦へと駆り立てている。