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PROJECT STORY

どこまで美しくなれるのか?
ホーローシステムキッチン、終わりなき挑戦。

高品位ホーローは、鋼板にガラス質の釉薬(うわ薬)を吹き付け、高温で焼き付けてつくる。
高級感あふれる深みある色調、繊細さや優雅さを醸し出す柄や模様。
そうしたホーローの美しさは、七宝焼きや陶磁器などの工芸品にも似た本来の製法に、独自の「加飾(絵付け)」技術が加わることによって生み出される。

さらに、切断や組み付けにも木材などとは比較にならないほど高度な「加工」技術が必要だ。
複雑で微妙なさじ加減を必要とする高品位ホーロー製品の開発。
だからこそ一層、より美しく、より妥協のないものへと、チームの想いは高まっていく。

MEMBER

座談会参加メンバー

座談会参加メンバー写真1

1993年入社
素材研究

河端 隆夫

Kawabata Takao

座談会参加メンバー写真2

2000年入社
製品開発

金子 英晃

Kaneko Hideaki

座談会参加メンバー写真3

1998年入社
製品開発

林 優花

Hayashi Yuka

座談会参加メンバー写真4

2014年入社
生産技術

植田 優介

Ueda Yusuke

座談会参加メンバー写真5

2015年入社
製品開発

野尻 義人

Nojiri Yoshito

座談会参加メンバー写真6

2002年入社
代理店営業

奥村 隆二

Okumura Ryuji

座談会参加メンバー写真7

2013年入社
ショールームアドバイザー

帳 真裕子

Tobari Mayuko

高いハードルに挑み、
ホーローの「究極の美しさ」を追求

2014年12月、開発部開発四課の林優花は、期待を胸に愛知県に赴いた。ホーローシステムキッチンのフラッグシップモデル「レミュー」の、《ホーローの「美しさの追求」と「ホーローの新しい質感表現」》をコンセプトとするフルモデルチェンジが、いよいよ始動できるかもしれない。待っていたのは釉薬などホーロー加工の研究部門である研究技術部の河端隆夫ほかメンバー約20名。彼らが課題としてきた圧倒的に美しい新色の開発が、ようやく実現の兆しを見せているという。意見交換の席に着いた林は、手渡された10cm四方ほどの多数のサンプルの中の数枚の輝きに心を躍らせた。ベースとなる釉薬を焼き付けた上に、転写紙などで柄を焼き付け、さらに透明感のある釉薬を焼き重ねてクリア層を形成するのだという。釉薬の吹き付け、焼き付けの難しさを知る林には、それを何度も繰り返すこの新色の量産化がいかに困難か、すぐに察しがついた。「でも、これしかない!」。そんな林の内心のつぶやきが聞こえたかのように河端がうなずいた。「サンプルの中からいいものを絞り込んで、生産性も考慮しながらさらに試作を重ねていきましょう」。頼もしい笑顔だった。

こうして、河端と林のやりとりが始まった。まず12、3色の候補色に対して複数のテストピースが河端から林へと送られる。「もっと柄を鮮明にできないか」「もっと色に深みを出せないか」「少しトーンを変えられないか」etc. …。量産可能な範囲での「究極の美しさ」を求め、ぎりぎりのせめぎ合いが続けられた。

ホーローの美しさを際立たせる
シャープなデザインを!

同年夏には、デザインの一新に向けて、開発部開発一課の金子英晃と当時は新入社員だった野尻義人の挑戦も始まった。 金子が担ったのは、キッチン全体の印象を決める扉の設計だ。河端と林がいずれ実現させるはずの新色のホーローが最大限に活きるよう、これまでにないスタイリッシュなデザインが求められた。例えば、シンプルさ、シャープさを表現するため、ホーロー材を極力幅の細いアルミの枠で囲みたい。ところが、細くなればなるほど、ホーロー材の厚みのバラツキを吸収するための余裕がなくなり、組み方に工夫が必要となってくる。金子は、粘り強く試作を繰り返し、5mmを切るほど細い枠の実現を追求していった。

一方、野尻は、引き出しの中を仕切る「間仕切り名人(デラックスタイプ)」の開発・設計に懸命だった。「間仕切り名人」とは、使い手の思いのままに位置を動かせるマグネット式の間仕切りで、磁石がつくというホーローならでは特性が大きく活かされている。ただ、従来は樹脂製で、安定感をよくするため幅も太く、見映えがしないのが難点となっていた。これを、扉の外枠と同じアルミ製に変え、薄くシャープに変身させる。ショールームアドバイザーや林をはじめとする開発部の女性陣にも意見を聞きながら、細かい改善も重ねた。例えば、従来は間仕切りの下部中央に1個の強力なマグネットを仕込んでいたのを、底面全体をマグネットシートで覆う形に変えて、しっかり止まるのに動かしやすいという使い勝手の良さを実現。また、ネジなどの目障りな部品は見えない場所に配することにもこだわった。戸惑うことも多かったが、15歳も年の違う金子がごく年の近い兄貴分のように気軽に話を聞いて、やりたいことができるよう助言したり、周囲に掛け合ったりと、終始、若い野尻を陰で支えた。

工芸品に並ぶほどの商品を、
果たして量産できるのか?

こうして開発も佳境に差し掛かった時、予期しなかった問題が持ち上がった。金子が手がけてきた扉のアルミ枠の組み付けがうまくいかないことがわかったのだ。新色のホーローは釉薬を複数回焼き重ねるため、厚みのバラツキが想定以上に大きくなってしまい、組み立ても難しくなってしまった。量産テストを担当した名古屋工場の植田優介は当時まだ入社3年目。判断を一任され、作業者が組んでいる様子を充分に観察したり自分で組んでみたりと、自問自答を繰り返した。組みにくさを工夫でカバーするのが自分たち生産課の役割だが、できないことをできると言ってしまうと品質問題につながりかねない。熟考の末、最終的に、設計の再考を求めるという決断を下した。品質管理部門も同じ判断だった。早速関係部門から15人ほどが集まり、対策が話し合われた。その席で生産部門のベテラン社員が、別の製品で使っているある組み方を応用することを提案。窮地に立っていた金子は、即座に「これはいける」と直感し、一転して難関を突破できることを確信した。猛然と再設計に取り掛かり、異例のスピードで再度量産テストへ。これに立ち会った植田は、短期間ですっかり改善された組み方に目を見張り、作業がスムーズに進むことに驚嘆した。「思い切って再考をお願いして本当によかった」。一つの山を越えた喜びが、全員を元気づけた。

成し遂げたフルモデルチェンジ、
ついに市場へ。

この間、林と河端が進めてきた新色の開発は、最終的に5色に絞りこまれていった。そのうち、最後にクリア層を焼き重ねるグロスカラーは3色。なかでもグロスダークブルーは藍の深い青みが魅せられるような輝きを放つ、これまでにないキッチンカラーに仕上がった。折しも、製造上の課題も全て解決。量産への準備が始まった。

ホーロー材の量産に関わる河端は、最後の最後にピンチに見舞われた。突然、グロスカラーの表面を覆うクリア層にほぼ2~3割という高頻度で白い濁りが発生したのだ。このまま量産に入れば工場に大きな損失が生じてしまう。河端は、長年の業務で培った豊富な経験則を駆使して釉薬の組成を懸命に微調整。なんとかこの現象の抑え込みに成功した。一方、植田は、多数ある新たな部材を誤りなく選び出してスムーズに組んでいけるよう、部材のレイアウトや指示書の書き方を一から見直すなど、周到に計画を進めていった。

想像を超える反響が生んだレミュー。
挑戦はさらに続く。

こうして、2017年8月、数々の試練を乗り越え、ついに10年ぶりのフルモデルチェンジを成し遂げたレミューが市場にデビューした。生まれ変わったレミューに販売を行う営業やショールームアドバイザーたちの士気も高まった。しかし、安くて良いものを提供したい工務店などの顧客に、どのようにしてハイクラスであるレミューを選んでもらうかが課題となった。だが、実際に触れてもらえればレミューの良さは伝わる。そう神戸支店販売課の奥村隆二は確信していた。そこで奥村は、あえてデザイン性や質感などの部分にセールスポイントを当てた。言葉には表しにくい魅力は、見てもらうきっかけとなり、反響も大きかった。「タカラを超えたタカラ」そんな声も多く、販売課の売上げの2割をレミューがあげた。また、思わぬ誤算もあったと語るのは神戸支店HDCショールームのフロアリーダーである帳真裕子だ。発売当初はハイクラスであるレミューの価値として、従来よりもさらに高まった機能性に焦点を当ててセールスをしていた。ところが、お客様の多くは、一目見ただけで色の良さ、高級感ある質感、高いデザイン性に惚れて購入を決めたという。技術者たちが細部までこだわったレミューが、自分だけの唯一のキッチンを求めるお客様の感性にぴったりとはまったのだ。

ホーローならではの美しさと機能性への反響は大きく、プロジェクトメンバーたちは想像以上の達成感を味わった。しかし、表から見えない、積み残された課題を知り抜いているのも彼らだ。それは同時に、未来への伸びしろでもある。「レミューはもっともっと高みを目指せる」。達成感のなかから突き上げてくるその想いが、今回の経験を通じ大きく成長したメンバーたちを、次の挑戦へと駆り立てている。