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七宝工芸の新たな時代に挑む

尾張七宝・七宝焼は、金属素地の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を焼き付けて美しい彩色を施す。陶芸とは素材も歴史も全く異なる宝飾工芸で七宝工芸と言われ、明治時代に技術が発展し、宝石のような美しさは高い評価をえて欧米にも多く輸出されたが、現代に新たな担い手は少ない。危機感を持った職人が七宝焼の無限大の可能性に挑んでいる。

七宝工芸の新たな時代に挑む 七宝工芸の新たな時代に挑む

計算し尽くして完成する美、「偶然」はない

七宝焼という名称から、陶芸と混同されることがあるが、七宝工芸は全く違う別ジャンル。大きな違いは七宝は土を使わないこと、焼き具合によって生まれる偶然美がないこと。
明治16年創業の七宝焼窯元の家に生まれ育った田村氏は、七宝焼は材料作りから完成まで使う素材も工程数も多く、自分が思い描いたところに向けて計算して作っていけるところが面白く大好きだという。

  • 計算し尽くして完成する美、「偶然」はない
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    計算し尽くして完成する美、「偶然」はない
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デザインが決まると、重要なのが材料作りで、中でも釉薬が一番のポイントになる。
グラデーションも色の変化がキレイにできればその通りに仕上がるので、どこにどの色を載せていくかを考えて準備される。出にくい色もあるが、あえて挑戦しているそうだ。

工業製品だからこそ、計算美で完成する

タカラスタンダードとの
モノづくりの共通点

伝統工芸の七宝焼とホーローの製法はよく似ています。工業製品のホーローも職人によってたくさんの工程を経て出来上がります。工業製品だからこそ、偶然美が許されず、同じ規格で作らなければなりません。ホーローは生き物のようなところがあり、湿度や温度などで出来上がる製品が変わることもあるため、徹底管理しながら製造をしています。
ホーローが水まわりにおいて非常に優れた素材だと考えているので、このような「てまひま」をかけて、製品づくりをしています。

工業製品だからこそ、計算美で完成する

100年先も変わらない美しさ

田村家では、先祖が残した100年前の作品が今も色鮮やかで美しい。七宝焼の特性上、色が褪せることがないのだ。使われる釉薬のルーツはツタンカーメンの仮面の一部に使用されているほど古いもの。日本では7世紀に作られた古墳から出土されている。

田村氏は、現在日本で知られている近代の七宝の歴史は、釉薬の発展の歴史といっても過言ではないという。先祖を含め地元地域でも盛んに研究開発がなされて、不透明なものから、半透明、透明へと革新的な進化を遂げ、世界に誇る品質を獲得した。そういったストーリーと、ただキレイなだけでなく、美しいモノが美しいままずっと愛用され続けるという側面も七宝焼の魅力なのだ。

100年先も変わらない美しさ 100年先も変わらない美しさ

キレイがずっと続くホーローへのこだわり

タカラスタンダードとの
モノづくりの共通点

ホーローの起源も、ツタンカーメンの黄金のマスクだといわれています。ですからホーローも、何百年経っても変わらない美しさがあります。
タカラスタンダードでは、いつまでも購入された時と同じように、キレイなまま使っていただきたいという思いから、ホーローという素材にこだわって、キッチンをはじめ暮らしの水まわり設備を作っています。

視野を広げて新たな可能性を開いていく

いろんなことに挑戦したいと考え、音楽や講演などで七宝焼を現代に伝える活動も行う田村氏であるが、最近七宝焼のアート制作にも力を入れている。もちろん伝統工芸として突き詰めることは大事だが、それだけでは視野が広がらない、今求められているモノづくりとは違う気がするという。実際にこれまでにない手法が試されている。
例えば、海外にも出品した「火の鳥」という作品では、通常失敗した時に出る焦げを逆手にとって、あえて模様として効果的に使っている。この手法は父・丈雅氏の助言によるもので、七宝焼に新たな可能性を開くヒントになった。見る人に驚かれ、七宝焼をよく知る人にも、「七宝でこういう表現が出来るんだ、カッコいいね」と評価された作品である。

また、これまでも従来の技法を踏襲してきたばかりではない。
かつて工芸宝飾品の絢爛豪華な美しさが人気を博した七宝焼であるが、丈雅氏の時代からマット調に仕上げるモノも作られてきた。
伝統は時代のニーズに合わせた進化もこれからの魅力になってくる。

視野を広げて新たな可能性を開いていく
視野を広げて新たな可能性を開いていく 視野を広げて新たな可能性を開いていく

ホーローキッチンで世界初、マット調の新柄誕生

タカラスタンダードとの
モノづくりの共通点

今回の新柄で、ホーローキッチンで初めてマット素材を実現しました。これは世界初です。艶のあるホーロー素材も美しくて良いのですが、マット素材は落ち着きのある雰囲気に仕上がりました。新柄のなかでも灰緑や白磁は、ホーローのものづくりの「てまひま」を表現しています。絶妙なニュアンスにまでこだわった柄です。

ホーローキッチンで世界初、マット調の新柄誕生
視野を広げて新たな可能性を開いていく 視野を広げて新たな可能性を開いていく

ホーローでマットな仕上げが出来るなんて、初めて知りました。指紋がつかないので本当にいいですね。私たちみたいな手作りではなく、工業製品としてキレイに作っていくのがすごいと思います。簡単に全部キレイにいくものではないのがわかるので、すごく研究されたのだと思います。ホーローの無限の可能性が伝わってきます。

プロフィール

プロフィール プロフィール

田村 有紀
田村七宝工芸/七宝職人

1986年 愛知県あま市七宝町生まれ。武蔵野美術大学卒業後、ライブアーティストとして活動するほか多業種を経験するなか、消えていく伝統工芸の未来に危機感を覚え、職人の道へ。1883年(明治16年)創業の七宝焼窯元「田村七宝工芸」の現当主である四代目当主で伝統工芸士の父と七宝作家の母に師事し、七宝焼発祥の地で唯一の跡継ぎとなる。七宝ジュエリーブランドの創立をはじめ、職人として、作家として、多彩な作品を発表。七宝のテーマソングを作りCDリリースをするなど、他ジャンルからも挑戦を続ける。その活動スタイルが評価され、プレゼンコンテスト優勝、全国で講演会依頼多数。

2008年 日本七宝作家協会展にて「COTTON七宝花瓶」入選
2018年 七宝新作展にて「葉脈文様七宝変形額」愛知県あま市教育委員会教育長賞 受賞
2019年 A Bridge to Japanese Art (ロンドン)に七宝作品出展
徳川美術館にて国宝 源氏物語とのコラボレーション展示開催(グループ展)
2020年 個展「Cutting-Edge」開催
徳川美術館にてお雛様とのコラボレーション展示開催(グループ展)
2021年 全国伝統的工芸品公募展にて「七宝ホーンスピーカー -流線-」入選
寺田倉庫ギャラリー WHAT CAFEにて「24molos」に作品出展(グループ展)
伊勢市クリエイターズワーケーションにアーティストとして選定

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